石巻とダイアログと

2月19日(日)に銀座の東日本復興応援プラザの会場で行われたイベント「石巻を知る― 東日本大震災から1 年、そしていまー」に縁あってダイアログファシリテーターをしてきました。

イベント案内文

『石巻を知る― 東日本大震災から1 年、そしていまー』
わたしたちが記憶し、語り継いでいかなければならない311。あの日から、まもなく1年がたちます。
震災直後の石巻の人々の姿を綴った「ふたたび、ここから」(ポプラ社刊)の執筆をきっかけに、
ご縁が生まれた石巻の人々を東京にお招きし、1日たっぷりと石巻を語りあうイベントを行います。

主催の池上正樹さん*1と、フューチャーセンターネットワークという集まりでお会いして、後日別の場所で再会を果たした際に、池上さんと裏方をお手伝いされているカトヨリさんから今回のイベントについて話を聞くことができました。まだ石巻はおろか震災地と称されるところへは足を運べていない自分にも何かお手伝いできないかということで、開催数日前という状況でしたが、ダイアログファシリテーターとしてお誘いを受けて参画させていただくことになりました。

石巻にかかわることができるのと、ダイアログファシリテーターの依頼を受けれる自分がいることに感謝し、がんばろうと思いました。*2

そして、当日までの打ち合わせはFacebookのグループとメッセージを利用して行いました。開催への想いについてヒアリングを行い、作成していただいたシナリオを元にイメージの共有しながら場作りについて意見を交わしました。打合せの中でファシリテーターとして対話の時間までに、対話を始めやすい状態(関係性)にするめの工夫について提案していきました。そして既に流れていた告知案内や、Facebookグループでのスタッフの方々の書き込みからどういう場になりそうかはイメージを試みましたが、震災地に関する集まりには初参画だったので、参加者が想像しきれないまま当日という想像と期待でドキドキな数日を過ごしました。 (^^;

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ファシリテーションポイント

事前の提案の一つが「名札」で、名前がお互いにわかるようにするのと、一言書けるハガキサイズのものはどうかと提案しました。私がいつも使うハガキに穴を開けてわっかの紐で留める簡易かつリーズナブルなので、裏方に優しい一品です。書く内容はスタッフからの案で何をリソースとして提供できるのか、何ができるのか、何をしたいかなどを書いていただくことにしました。自分を表すこと。これは参加する場への最初の貢献かもしれませんね。


さて、当日ですが、受け付けが始まったところで、まったくスタッフの方には言ってなかったのですが、勝手に前に立ってウェルカムファシリテーションを始めてしまいました。事前の打ち合わせで『参加者の方が会場にいらしたら、スタッフから声をかけて少しコミュニケーションを取りましょう』と話していたので、いいかなと思いつつ、なるべく席に着く方全員に声をかける事を心がけました。特にお一人でいらした方には、名札に書いていただいた内容をお聞きしたりしました。その中では石巻に自分は何ができるのか探しに来たと書かれている方も多く、その何かの第一歩を石巻を知れるイベントにいらっしゃるという純粋さのようなものを感じました。以前、他の集まりで震災に関連のある場に携わるなら、ちゃんと覚悟を持ちなさいと言われていましたが、まさにそのとおりでした。スタッフの、講演者の、そして何より参加者の「本気さ」は肌で感じられるほどのものでした。

ファシリテーションポイント

参加者の方を想像しきれない時はこうやって開場中に知ることもできますし、ファシリテーションの達人な方に以前アドバイスいただいたのですが、始まる前の時間で参加者と絡む時の感触と、関われそうな人を感じておくと良いと言われたことを思い出しました。


私のダイアログファシリテーションの基本は初対面の人達が楽しげに、でもなんだかいつもより話せたというゆるさもある場づくりを得意としてるのですが、今回は「真剣に語れる場づくり」にしようとこの開場の時間のやりとりで気持を固めました。さらに今回はパワポでのスライドは作らずに、現場入りしてからスケッチブックに高橋メソッドでキーワードを書き上げました。これは事前の打ち合せでがシナリオまで作られた場だったので、ちゃんとつたえなければならない部分もあり、半分自分のメモ的な意味合いもありましたが、自分のセッションのインストラクションにPCのセッティングなどで時間をとられたなくなかったのと、何より現場の感覚を大事に作りたかったというのがありました。

プログラムは、石巻の現在の話、当時の話、想い、そして今に至るまでの話、当時の映像、そして演者からの飾り一つない本当に伝えたいこと・・・。1つ1つが本気で、参加者の人に波及していくような感覚・・・。私は自分のセッションに向けて参加者の方、場全体の雰囲気を受け取りたくて、少し引いた場所から俯瞰的に見たり、休憩中に参加者の方と言葉を交わさせていただいて、インストラクションで何を伝えるか、意識してもらうかをじっくり考えました。そして、その考えは直前までまとまらず、ダイアログのセッション前にお話をされた方のシンプルに本気な言葉から場のデザインを決めました。

ファシリテーションポイント

事前に考えていたアイスブレイクは「名前を呼びながら握手」でした。参加していた知り合いにデモをするかもと頼んでおきましたが、実際には本気の語りがすでに場を作っていて、後は話しかける相手がフラットな関係の相手であることを参加者に伝えるだけでいけそうだと感じたので「握手」は辞めにしました。代わりに周りを見まわして目をお互いに合わせてもらうことをしてもらって、後は普通に自己紹介をしてもらいました。話始めるのに言葉数が増えるようにと『誕生日順、ただし今日を起算日に・・。』という分かりにくさを組み込んだくらいでした。


自己紹介には、この一日を通して感じたこと、今していること、今からしたいことなど想いを入れてもらうように伝えました。3〜5人のグループだったので、各自2分くらいでという制約で。見ていた感じではみなさんそれぞれが自分事をちゃんと口に出せていたようだなと思いました。次の問いは「何をしたいか」「何が提供できるか」をそのグループとして挙げてもらう時間にしました。これは主催側の想いとして、少しコミットを持ってほしい。ということがあり、ただ自分の想いを出すだけでなく、次への思考を促すという意味でよい問いになったと思います。

ファシリテーションポイント

今回のグルーピングは、あまり「知らない人同士でグループになる」にはこだわりませんでした。それは、家族でいらした方や、仲間で来ている方が見受けられて、このイベントの時間を共有した人たちならいつもと違う感度、深度で語り直すこともできると思い、「近くの人と」という範囲でのファシリテートを行いました。


最後は各グループで考えたことを大きめの付箋に書いてもらい、ホワイトボードに張ってもらいました。それから自分の名札の裏にいっしょに話した人の名前を書いてもらいました。ハーベスト(収穫)として、本当はちゃんと各グループの付箋を共有する時間を取りたかったのですが、時間的に押していたので私はそこをやや流し気味で終わろうとしてしまいました。その時、司会の方が付箋の内容を参加者にしっかりと伝えてくれて、ちゃんと「終える」ことができました。スタッフとし参画していらっしゃった方々ひとりひとりが役割を意識して動いてらしたのはすごいと思いました。司会の方と相互に意識しながら場を作ったのは自分にとっては初めての経験だったと思います。とてもいい体験でした。

このイベントを通して考えたこと

ファシリテーターを依頼されるということは、主催の方の想い(場のゴール)を大事にするのは大切だと改めて思いました。ダイアログの場は始まってしまえば、参加者に委ねるのが自分のやり方なので、場へのインストラクションで何を意識してもらうかが重要です。自分が主催の場合はそこはわりと感覚でやってますが(誤解のないように補足すると、場の感じで語感は選びますよ(笑))、依頼の場合は伝えるべきキーワードは決めて、共有しておくことが大事です。今回の反省として、時間配分的に時間が足りないと認識して思い描くゴールにたどりつかないかもと思いながら、進めてしまったことです。個人で行うふりかえりは得意なのですが、グループで盛り上がった状態でのハーベストのファシリテートが下手だなぁと痛感・・。(^^;
このあたりはファシリテーターの勝手なフィードバックであって、参加者の方はまったく別の感想をお持ちだったとは思います。イベントが終わっても、いろんな人がそのまま語り合っていたのが、印象的でした。この場がだれかの何かのきっかけになってくれたのならうれしいです。

最後にこのイベントに誘ってくださった、池上さんとカトヨリさんに感謝します。

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*2:実はこの日のために服も一式新調しました。GAPでですけど。笑)